信徳寺
2022年5月の掲示板
逆境は最高の御馳走さ(MOROHA「革命」)
毎月、ことばを考えていると何も思いつかないことがあります。そういった時 は日常で気になったことばを拝借させていただいています。 今回は 2 人組のラップユニットである MOROHA さんの「革命」という曲より 引用しました。「逆境は最高の御馳走さ」ということで、逆境こそ自分を奮い立た せるものとして表現されていますが、仏教の視点からこのように受け止めること ができます。 仏教のことばで「一切皆苦」ということばがあります。四法印という仏教の根 本理念を表した「諸行無常(すべての物事は常に変化する)・諸法無我(すべての 物事を構成するものに我がない)・一切皆苦(あらゆるものは苦である)・涅槃寂 静(煩悩の吹き消された悟りの世界である涅槃はやすらぎの境地である)」のうち の一つになります。この「苦」とは苦悩であり、すなわち私たちの思い通りにな らないことです。代表的なものを「四苦八苦」といい、生老病死(生まれること・ 老いること・病を抱えること・いのち終えること)の四苦と愛別離苦(大切な方 と必ず別れねばならないこと)、怨憎会苦(憎い人に会うこと)、求不得苦(求め るものが得られないこと)、五蘊盛苦(肉体と精神が思うようにならないこと)の 4つを合わせて八苦となります。すなわち、この私のいのちは全く思うようにな らないということが「一切皆苦」の意味になります。 では、その原因はなんでしょう?それは「自分」があるからです。自分の都合 というフィルターで全てに執着していくことで、自らの思いとそぐわないことに 対して思い通りにならないという苦悩を感じていくことになります。「自分」を捨 てされば、その苦悩は消滅します。それが先の「涅槃寂静」ですが、そこへ向か い修行していくのが仏教になるわけです。 だからこの「自分」があるからそこをきっかけとして究極の悟りの世界である 涅槃ということへのベクトルを持つようになる、その大切さに気づくことができ るという意味で、「逆境は最高の御馳走さ」となります。 また浄土真宗的には、この「自分」があるからその危うさを放ってはおけない 阿弥陀如来が「涅槃寂静」に至る道を全てご用意してくださったので、おまかせ させていただきます。逆境を目当てにしてくださるから、「逆境は最高の御馳走 さ」と受け止めていけます。 お互い様、逆境だらけの人生ではありますが、このような受け止め方はいかが でしょうか。


