信徳寺
2022年6月の掲示板
あなたをひとりぼっちにしない存在をほとけさまと言う 〜仏身円満無背相〜
今月のことばは7世紀ごろに中国で活躍された善導大師のおことばである「仏身円満無背相(仏身円満にして背相なし)」から伺ったものになります。ほとけさまのお姿は全てに満ちておられ私たちに決して背中を向けることはないんだよ、正面を向いてこの私のことを抱きしめてくださる存在だよといただいています。
人は往々にして孤独です。生まれた時もいのち終えていく時も結局独りぼっちではないでしょうか。また、生きている間に手にしたものを手放していかねばならないいのちを生きています。だからこそ、本当に孤独感を覚えた時に、どうすることもできない、誰もわかってくれないというような我が苦しみこそ全てであるような気持ちになってしまうのではないでしょうか。それに対してほとけさまのあり方は、あなたのことわかっているよ、知っているよ、だから大丈夫というお心です。生きとし生けるいのち、誰に対しても淋しい心をぎゅっと抱きしめてくださる存在が阿弥陀如来というほとけさまになります。
以前こんなことがありました。お墓でのご法事を依頼され、お勤めさせていただいたのですが、その日は暴風雨の天候でした。雨よけにテントを設営してくださったのですが、風によって雨が吹き込んできます。御供物の干し椎茸が吹き込む雨により次第に戻っていくような天候でした。そんな中、1才くらいの子どもさんを連れたお母さんが参列されていました。このような天候なので、途中ぐずったりすることも想定しつつ、お勤めいたしました。すると最後までその子どもさんはおとなしくされていました。なかなか肝の座った子どもさんだと思ったのですが、改めて思い直しをいたしました。それは今この場こそ、その子どもさんにとって一番安心できる場所、すなわち母の胸に抱かれるという状況だったということに気づいたからでした。我が子のことを思い、安心させようという親心、そしてそれをそのまま受け止め安心するこの姿を、暴風雨の景色の中に感じた経験でした。
私たちもそのようにほとけさまに抱かれているのだろうと受け止めています。私たちの人生はそれこそ暴風雨の中にあるようなものです。いつ何時どうなるかわからない、想定外しかない人生を歩んでいます。その私たちに対し、大丈夫、わかってるよ、安心してねとお心をかけてくださり続けているのがほとけさまです。そのお心に、生きていく大きな支え、よりどころを賜っていくのです。

